【令和8年度版】短時間労働者労働時間延長支援コースの変更点と注意点|岡山・倉敷の社労士が解説

導入:まず結論からお伝えします
令和8年度(2026年度)から、パート・アルバイトの方の社会保険加入を後押しする助成金は「短時間労働者労働時間延長支援コース」に一本化されました。旧コース(社会保険適用時処遇改善コース)は令和7年度末で完全に終了しています。
結論として、岡山・倉敷エリアでパート従業員の労働時間延長や社会保険加入を検討している経営者の方が今すぐ確認すべきことは、次の3点です。
- キャリアアップ計画書を、労働時間の延長など最初の対応を行う「前日まで」に受理してもらうこと
- 労働時間の延長幅に応じて、基本給の増額(賃上げ)が必要になる場合があること
- 延長時間の計算には細かい端数処理のルールがあり、ここでのズレが不支給につながること
制度の詳細な仕組みについては、当事務所の別記事「【令和8年度雇用関係助成金⑥】パートの時間延長と社保加入で最大50万円」で解説していますので、そちらもあわせてご確認ください。
本記事では、令和8年度からの変更点と、実務で特に注意していただきたいポイントに絞ってご説明します。
制度概要:短時間労働者労働時間延長支援コースとは
短時間労働者労働時間延長支援コースは、パート・アルバイトの方の週の所定労働時間を延長し、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象とすることで、企業が受け取れる助成金です。
従業員の処遇改善(賃上げ・待遇向上)を後押しする制度として位置づけられています。
令和5〜7年度に実施されていた旧「社会保険適用時処遇改善コース」(手当等支給メニュー・労働時間延長メニュー・併用メニュー)は令和7年度末で完全に廃止されており、令和8年度以降に新たに社会保険を適用させる場合は、すべてこの「短時間労働者労働時間延長支援コース」で対応することになります。
制度の対象者要件や助成額の詳細な内訳については、別記事「【令和8年度雇用関係助成金⑥】パートの時間延長と社保加入で最大50万円」にて詳しく解説していますので、ここでは割愛します。
自社への影響:岡山・倉敷の中小企業が確認すべきこと
「うちは関係ないだろう」と思われる経営者の方も多いのですが、次のいずれかに当てはまる場合は、確認しておく価値があります。
- パート・アルバイトの方の労働時間や賃金を、令和8年度以降に見直す予定がある
- 「年収の壁」を意識して働き方を調整している従業員がいる
- 従業員の社会保険加入について、これから初めて対応を検討している
一方で、助成金の受給には対象企業の条件・成果目標・申請手続き上の注意点があり、「申請すればすべての企業が必ずもらえる」制度ではありません。助成額も、常時雇用する労働者数によって「小規模企業」か「中小企業」かの区分が変わり、金額が異なります。この判定は、各回の支給申請の時点における企業全体の労働者数で行われる点にもご注意ください。
実務対応・注意点:ここを間違えると不支給になります
1. キャリアアップ計画書の提出タイミング
労働時間の延長や社会保険の適用など、最初の対応を行う前日までにキャリアアップ計画書が労働局に受理されている必要があります。計画書に形式的な不備があり差し戻しになった場合は、修正して再提出し、受理された日以降の対応しか助成の対象になりません。確実に受給するために、対応を始める前の早い段階で計画書の準備に着手することをおすすめします。
2. 労働時間の延長幅と賃上げ(基本給増額)の連動
週の所定労働時間の延長幅が5時間未満の場合、延長幅に応じて基本給の増額が必要になります。
| 延長幅 | 必要な基本給の増額 |
|---|---|
| 5時間以上 | 増額は不要 |
| 4時間以上5時間未満 | 5%以上 |
| 3時間以上4時間未満 | 10%以上 |
| 2時間以上3時間未満 | 15%以上 |
この基準は条件によって細かく定められているため、自社のケースがどこに該当するかは、事前に確認しておくと安心です。
3. 延長時間数の端数処理
延長前の労働時間は「延長前6か月の週平均実労働時間(小数点以下切り上げ)」、延長後の労働時間は「延長後6か月の週所定労働時間(小数点第2位以下切り上げ)」を基準に比較します。この端数処理の基準がそれぞれ異なるため、わずかな計算の違いで「5時間以上延長」のつもりが「4時間台」になってしまうこともあります。狙っていた延長幅を下回ると、賃上げ要件を満たしていない扱いとなり、不支給の原因になります。労働時間や賃金台帳の記録は、日頃から正確に管理しておくことが実務上とても重要です。
4. 意図的な就業調整とみなされないための記録整備
「助成金を受け取るために、あえて一定期間、労働時間や賃金を低く抑えてから延長した」とみなされた場合は、不支給の対象となる可能性があります。従業員本人の希望による労働時間の変動など、正当な理由がある場合は、その経緯を「労使連名の申立書」やタイムカードなど客観的な記録として残しておくことが、勤務実態を証明するうえで有効です。
5. 申請後の修正・追給はできません
支給申請時に提出する賃金台帳や雇用契約書などの書類に不備や計算ミスがあると、申請後に不足分を追加で支払って書類を差し替えるといった対応は認められず、原則として不支給となります。この助成金は「一発勝負」の性質が強いため、申請前の書類チェックを丁寧に行うことが、確実な受給につながります。
6. 労働局によるヒアリング・実地調査について
近年、対象となった従業員の方に労働局から直接電話などで聞き取りが行われるケースが増えています。これは制度の適正な運用を確保するための取り組みであり、日頃から適切な雇用管理を行い、原則通りに申請していれば、過度に心配する必要はありません。むしろ、労働条件通知書やタイムカードなど基本的な書類を整えておくことが、いざという時の安心材料になります。
よくある誤解
助成金に関しては、次のような誤解が広がりがちですので、ご注意ください。
❌「パート社員を社会保険に加入させれば、誰でも1人あたり最大75万円もらえる」
→ 最大75万円は、1年目・2年目の取組をすべて完遂した小規模企業(常時雇用労働者30人以下)に限られる金額です。労働者数が30人を超える中小企業では、助成額の上限は異なります。
❌「年収の壁対策なら、すべての企業が簡単にまとまった助成金を受け取れる」
→ 対象企業・対象労働者にはそれぞれ細かい条件があり、条件を満たさない場合は対象外となります。
❌「実質無料で、従業員の社会保険料負担分を会社が丸ごとカバーできる」
→ 助成金はあくまで一部の支援であり、保険料負担の全額を保証するものではありません。
❌「1年目に要件をクリアできれば、2年目の助成金も自動的に手に入る」
→ 2年目の取組を行うことで助成額の加算が見込める仕組みもありますが、自動的に支給されるものではなく、別途の要件確認が必要です。詳細は個別にご相談ください。
FAQ
Q1. 旧「社会保険適用時処遇改善コース」を使った申請は、もうできませんか?
A. 令和7年度末で旧コースは完全に終了しており、令和8年度以降に新たに社会保険を適用させる場合は「短時間労働者労働時間延長支援コース」での対応となります。
Q2. キャリアアップ計画書の提出が遅れた場合、後から対応した分もさかのぼって助成対象になりますか?
A. さかのぼっての適用は認められません。最初の措置を行う前日までに計画書が受理されている必要があるため、対応を検討し始めた段階で早めに準備を進めることをおすすめします。
Q3. 労働時間を延長すれば、必ず賃上げ(基本給増額)が必要になりますか?
A. 延長幅が5時間以上であれば増額は不要ですが、5時間未満の延長では延長幅に応じた基本給の増額が求められます。自社のケースがどの区分に当たるか、事前の確認が有効です。
Q4. 従業員から労働局に聞き取りがあると聞き、不安です。何か問題があるということでしょうか?
A. 聞き取りは制度の適正な運用を確認するための一般的な取り組みであり、それ自体が問題を意味するものではありません。日頃から雇用契約書やタイムカードなどの記録を適切に整えていれば、過度に心配する必要はありません。
Q5. 2年目の取組についても、貴事務所でサポートしてもらえますか?
A. 2年目の取組は、1年目とは別に「2年目の取組に対する支給(第2期支給)」として独立して申請できます。要件や実務対応の詳細については個別にご相談いただく形となります。
チェックリスト:まずはここを確認しましょう
- 対象となるパート・アルバイトの方が、過去2年以内に同一事業所で社会保険に加入していなかったか確認した
- 対象者が、適用日前日から過去6か月間、社会保険の加入要件(従業員50人以下の企業では、原則として週30時間未満など自社の規模に応じた基準)を満たさない働き方をしていたか確認した
- 労働時間を延長する前に、キャリアアップ計画書の提出スケジュールを立てた
- 延長幅が5時間未満になる場合、必要な基本給増額の割合を確認した
- 延長前後の労働時間の端数処理ルールを踏まえて、延長幅を再計算した
- 労働条件通知書・雇用契約書・タイムカードなど、勤務実態を証明する書類を整えている
- 労働保険料の未納や労働関係法令違反など、事業主側の対象外要件に該当しないか確認した
- 社会保険の適用日(労働時間延長日)以降、対象者が雇用保険の被保険者としても適切に加入しているか確認した
- 対象労働者が、事業主または取締役の3親等以内の親族(配偶者、子、兄弟姉妹など)に該当しないか確認した
まとめ
令和8年度からは、パート従業員の社会保険加入や労働時間延長を支援する助成金が「短時間労働者労働時間延長支援コース」に一本化されました。うまく活用できる場合がありますが、キャリアアップ計画書の提出タイミング、賃上げ要件との連動、延長時間の端数処理など、実務上注意すべきポイントが多くあります。申請後の修正は認められないため、早めの準備と正確な書類整備が、確実な受給につながる一番の近道です。
ぜひご相談ください
「自社のケースがどの区分に当たるか分からない」「計画書の準備を何から始めればよいか知りたい」という場合は、岡山・倉敷エリアの中小企業の労務管理を数多くサポートしてきた当事務所へ、ぜひ無料相談をご利用ください。
制度の正しい理解に基づいた申請サポートを通じて、安心して手続きを進めていただけるようお手伝いいたします。





