【助成金情報】キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」とは?2026年度の対象者・助成額・申請方法を解説|岡山・倉敷

2026年10月2日から、岡山県の最低賃金は1,047円から1,104円へ引き上げられます。「パート・アルバイトの時給を上げないといけないけれど、何か使える助成金はないだろうか」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

パート・アルバイトなど非正規社員の基本給を一定以上引き上げる場合、「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」という国の助成金を活用できる場合があります。

ただし、「最低賃金を上げただけ」で自動的にもらえる助成金ではありません。対象になるかどうかは、引き上げの条件・対象になる社員・手続きのタイミングなど、いくつかの要件を満たしているかで決まります。

この記事では、

  • どんな会社・従業員が対象になるのか
  • いくら引き上げれば、いくら助成されるのか
  • 最低賃金対応との違い
  • 申請の流れと注意点

を、初めてこの制度を調べる経営者の方にもわかるように解説します。

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」とは?

キャリアアップ助成金は、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など、正社員以外の働き方をしている社員(以下「非正規社員」)の待遇を改善した会社に、国(厚生労働省)が支給する助成金です。全部で複数のコースがあり、その中の一つが「賃金規定等改定コース」です。

「パート・アルバイトなど非正規社員の基本給のルール(賃金規定)を、3%以上引き上げて実際に適用した会社」に対して支給される助成金

ポイントは2つあります。

  1. 「賃金規定」(給与のルールを定めた社内規程や賃金テーブルなど)を整備して、引き上げ後のルールを実際に運用する必要があります。
  2. 対象になるのは「基本給」です。通勤手当や役職手当などの諸手当だけを増やしても、このコースの対象にはなりません。

「賃金規定」というと難しく聞こえますが、要は「うちの会社は、パートさんの時給をこのルールで決めています」という取り決めのことです。就業規則の一部として定めている会社もあれば、賃金規定・給与規程という別の書面にしている会社もあります。

2026年度の対象事業主・対象労働者

対象になる会社(事業主)の主な条件

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 「キャリアアップ管理者」を社内で決めていること
  • 「キャリアアップ計画」を、賃金規定を改定する日の前日までに労働局へ提出していること

「賃金を上げてしまってから」慌てて申請の準備をしても間に合いません。 賃金規定を改定する前の段階で計画を出しておく必要がある、という点は特に注意してください。

対象になる労働者

対象になるのは、いわゆる非正規社員(有期雇用労働者、パート・アルバイトなどの短時間労働者、派遣労働者)です。「パートなら誰でも無条件に対象」というわけではなく、次のような点も確認が必要です。

  • 一部の非正規社員だけ賃金を引き上げる場合、その対象範囲は「雇用形態別」「職種別」など、合理的な理由による区分である必要があります。
    年齢だけを理由に対象・対象外を分けることは認められません。
  • 基本給の3%以上増額改定が実際に行われ、その規定が適用されていることが必要です。
    また、対象労働者には、賃金規定等を増額改定する日の前日から起算して3か月以上前から雇用されていること、改定後も6か月以上継続して雇用されることなどの要件があります。
    そのため、「賃金を3%以上上げれば、誰でも対象になる」という制度ではありません。

自社の場合、「どの従業員区分を、どのルールで引き上げるか」を整理した上で、要件に当てはまるかを確認することが大切です。

賃金をいくら引き上げればいい?助成額はいくら?

助成額は、基本給の引き上げ率によって変わります。厚生労働省の2026年度(令和8年度)資料によると、1人あたりの助成額(本体部分)は次のとおりです。

基本給の増額改定率 中小企業(1人あたり) 大企業(1人あたり)
3%以上4%未満 4万円 2.6万円
4%以上5%未満 5万円 3.3万円
5%以上6%未満 6.5万円 4.3万円
6%以上 7万円 4.6万円

出典:厚生労働省「事業主の皆さまへ キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日版)

さらに、次の取り組みを行った場合は、事業所単位で加算があります(いずれも中小企業の場合。大企業は金額が異なります)。

  • 「職務評価」の手法を活用して増額改定を行った場合:1事業所あたり20万円
  • 非正規社員向けの昇給制度を新たに設けた場合:1事業所あたり20万円

「対象になる人数が多いほど、会社全体の助成額も大きくなる」という設計です。ただし、支給対象となる人数の上限や、加算の申請回数の上限などの細かい要件もありますので、自社の対象人数がどのくらいになるかは、最新の公式資料や専門家との確認をおすすめします。

最低賃金の引き上げとはどう違う?

ここは特に誤解しやすいポイントです。

たとえば「岡山県の最低賃金が2026年10月2日から1,104円になるから、パートさんの時給を1,104円にした」というだけでは、キャリアアップ助成金の要件を自動的に満たすわけではありません。

  • 最低賃金の引き上げへの対応:法律で決まった最低ラインを下回らないように時給を調整すること(会社の義務)
  • キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース:基本給の賃金規定そのものを3%以上引き上げ、事前の計画届出などの手続きを踏んで申請すること(活用できる場合がある制度)

この2つは、目的も手続きも別物です。最低賃金対応のためにやむを得ず時給を数十円だけ引き上げたケースでは、引き上げ率が3%に届かないこともありますし、事前の計画届出をしていなければ、たとえ3%以上の引き上げであっても対象にはなりません。

一方で、「どうせ最低賃金対応で賃金規定を見直すなら、この機会にまとめて3%以上の引き上げをして、要件を満たす形で規定を改定する」という進め方であれば、活用を検討できる可能性があります。「最低賃金が上がるから自動的にもらえる」のではなく、「賃金規定の改定内容と手続きが要件に合っているかどうか」が鍵になる、という点を押さえておいてください。

申請から助成金を受け取るまでの流れ

厚生労働省の資料をもとにした基本的な流れは、次のとおりです。

  1. 賃金規定等の改定内容を検討する:どの従業員区分の基本給を、何%引き上げるかを決めます。
  2. キャリアアップ計画を作成し、労働局へ提出する:賃金規定を改定する日の前日までに提出する必要があります。
  3. 賃金規定等を実際に改定する:就業規則や賃金規程・賃金テーブルを書き換えます。単に一覧表の数字だけを直すのではなく、規定として明確にしておくことが重要です。
  4. 改定後の規定に基づき、対象労働者の賃金を実際に支払う:取り組み後6か月分の賃金を、改定後のルールで支払います。
  5. 支給申請を行う:取り組み後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に申請します。
  6. 労働局による審査・支給決定:審査を経て、支給が決定されます。

「計画届出 → 規定改定 → 6か月運用 → 申請」という順番を守ることが何よりも大切です。この順番を間違えると、賃金を引き上げても助成金の対象にならない可能性があります。

申請時に注意したいポイント

以下のような点は、「知らずに進めると対象外になってしまう可能性がある」ため、特に注意してください。

  • 計画届出前に賃金規定を改定してしまわない:計画届出よりも前に改定・適用してしまうと、対象外になります。
  • 「一部の対象者だけ引き上げる」場合の区分の合理性:雇用形態別・職種別など、説明できる合理的な区分になっているか確認してください。
  • 基本給の改定であることを明確にする:手当だけの増額や、口頭・慣行による引き上げではなく、規定として明文化されていることが必要です。
  • 申請期限を過ぎない:6か月分の賃金支払い後、2か月以内という期限があります。社内のスケジュール管理を早めに行いましょう。
  • 必要書類をそろえる:就業規則・賃金規程の新旧比較がわかる書類、賃金台帳、キャリアアップ計画書など、複数の書類が必要になります。詳細は労働局・ハローワークの最新の申請の手引きで確認することをおすすめします。

制度の要件は年度により見直しが行われることがあるため、実際に検討される際は、岡山労働局やハローワークの窓口、または社会保険労務士へ事前にご相談いただくことをおすすめします。

業務改善助成金との違い

非正規社員の賃上げを検討する際、「業務改善助成金」という制度も比較検討されることがあります。どちらも「賃上げ」に関わる制度ですが、支援の中身は異なります。

比較項目 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) 業務改善助成金
主な支援内容 非正規社員の基本給の引き上げ(規定改定) 事業場内最低賃金の引き上げ+設備投資
設備投資要件 なし 生産性向上に資する設備投資等が必要
対象となる労働者 有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者等の一部または全部 事業場内最低賃金の引き上げに関係する労働者
賃金引き上げの考え方 基本給を3%以上増額改定 事業場内最低賃金を一定額(50円など)以上引き上げ
助成金額の目安 1人あたり4万円~7万円+事業所加算(中小企業の場合) 設備投資費用の3/4~4/5、上限30万円~600万円程度(要件による)
  • 「パート等の給与体系を見直して、基本給そのものを底上げしたい」場合は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
  • 「賃上げにあわせて、レジ・在庫管理システムなどの設備投資も行い、生産性向上に取り組みたい」場合は、業務改善助成金

どちらが良い・悪いということではなく、自社が「賃金規定の見直し」と「設備投資」のどちらに重点を置きたいかによって、検討すべき制度が変わってきます。 設備投資を伴う賃上げを検討している場合は、業務改善助成金も選択肢になりますので、あわせてご確認ください。

まとめ

  • パート・アルバイトなど非正規社員の基本給を3%以上引き上げる予定がある会社は、キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」を活用できる場合があります。
  • ただし、「最低賃金が上がったから」自動的にもらえるものではなく、賃金規定の改定内容・対象者の区分・計画届出のタイミングなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
  • 賃金規定の改定前にキャリアアップ計画を提出しておくなど、手順を間違えないことが特に重要です。

自社が対象になるかどうかは、賃金規定の現状や引き上げ予定の内容によって異なります。不明な点がある場合は、岡山労働局・ハローワークの窓口、または社会保険労務士へ一度ご相談いただくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. パート・アルバイトの時給を最低賃金と同じ額に引き上げただけでも対象になりますか?

A. 最低賃金に合わせて時給を引き上げただけで、自動的に対象になるわけではありません。基本給の3%以上の増額改定に加え、対象労働者の要件、賃金規定等への適用、事前のキャリアアップ計画の提出など、複数の要件を満たす必要があります。

Q2. 従業員が数名の小さな会社でも申請できますか?

A. 雇用保険の適用事業所であり、対象となる非正規社員がいれば、会社の規模にかかわらず検討できる場合があります。

Q3. 賃金規定を改定する前に、何を準備すればよいですか?

A. まずは「どの従業員区分を、何%引き上げるか」を整理したうえで、キャリアアップ計画を作成し、賃金規定を改定する前日までに労働局へ提出することが必要です。改定を先に行ってしまうと、対象外になりますのでご注意ください。

Q4. 業務改善助成金とキャリアアップ助成金は同時に使えますか?

A. 制度ごとに要件が異なるため、組み合わせて活用できるかどうかは、取り組みの内容によって異なります。設備投資も賃金規定の改定もあわせて検討している場合は、それぞれの要件を専門家と確認しながら進めることをおすすめします。

Q5. 助成金の金額は必ずこの表のとおりもらえるのですか?

A. 表の金額は、要件を満たした場合の助成額の目安です。対象人数や審査結果によって実際の支給額は変わりますし、年度によって制度内容が見直される場合もあります。申請前に、最新の公式資料や労働局・専門家への確認をおすすめします。


パート・アルバイト等の賃金引き上げやキャリアアップ助成金の活用について、自社の状況に当てはめた具体的なご相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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