【助成金情報】岡山県の製造業で「パート賞与40万円受給」事例に学ぶ―自社で確認すべきポイントとは|岡山・倉敷

パート社員への賞与支給で40万円!受給事例のご紹介

岡山県内のある製造業(従業員20名規模)で、パート社員への賞与支給をきっかけに、キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)で40万円を受給した事例があります。

この事例は励みになる一方で、そのまま真似をすると思わぬ落とし穴にはまることがあります。

結論から言うと、この記事で経営者の方に知っていただきたいのは次の3点です。

  • 賞与制度は「特定の1人」ではなく「自社で雇用するすべての有期雇用労働者(パート・アルバイト等)」に適用する必要があること
  • 今後パートを新たに採用した場合も、同じ賞与を支給する義務が続くこと
  • 就業規則を変更する前日までに、労働局へ計画書を提出しておく必要があること

「うちも使えるかもしれない」と感じた方は、まずはこの記事で自社の状況を確認し、そのうえで社会保険労務士への無料相談をご検討ください。

制度概要:キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)とは

キャリアアップ助成金は、パートや契約社員など有期雇用労働者の待遇を改善する取り組みを行った企業に対して、国から支給される助成金です。そのうち「賞与・退職金制度導入コース」は、有期雇用労働者に対して新たに賞与(ボーナス)や退職金の制度を設け、実際に支給した場合に活用できる制度です。

制度の詳しい要件は複雑なため、ここでは経営者の皆様が「自社に関係があるか」を判断できる範囲にとどめ、具体的な適用可否は社会保険労務士にご確認いただくことをおすすめします。

自社への影響:「今」だけでなく「これから」も考える必要があります

冒頭の事例では、たまたま対象となる有期雇用労働者等(パート従業員)1名だったため、その1名に賞与を支給することで「すべての有期雇用労働者への適用」という要件を満たすことができました。

しかし、これは「1名だけに特別なボーナスを出せばよい」という制度ではありません。就業規則上は「雇用するすべての有期雇用労働者」に適用される規定として整備する必要があり、その結果、次のような影響が今後発生します。

  • 今後新たにパートやアルバイトを採用した場合も、同じ条件(6か月分相当として5万円以上の賞与)を支給する義務が生じます
  • 一部の対象者だけに支給し、他の対象者には支給しないという運用は認められません
  • 特定の人(いわゆる「お気に入り」の社員)だけを狙い撃ちして支給するような制度設計も、合理的な理由がない限り対象外となります

つまり、この助成金は「今回もらって終わり」ではなく、将来の人件費設計も含めた経営判断として捉える必要があります。この視点を持ったうえで検討することで、無理のない形で処遇改善を進めることができます。

実務対応・注意点:確実に受給するために確認すべきこと

助成金を確実に受給するために、次の点を順番に確認しましょう。前もって準備を進めることで、スムーズに手続きを進めることができます。

1. 就業規則の変更前に計画書の提出が必要です

就業規則に賞与制度を新たに規定する(新設する)日の前日までに、「キャリアアップ計画書」を管轄の労働局へ提出し、受理されている必要があります。この順番が前後すると、後から是正することはできません。手続きの順序を最初に確認しておくことが、確実な受給への近道です。

2. 従業員10名以上の場合は、労基署の届出印がある就業規則が必要です

従業員数が10名以上の事業所(今回の事例企業も20名規模)は、就業規則を労働基準監督署へ届け出る義務があります。助成金の申請時にも、労基署の受理印がある就業規則の写しの提出が必要です。10名未満の事業所で使われる「就業規則の申立書」による代替はできませんので、自社の従業員数を踏まえてご準備ください。

3. 実際の支給が先、助成金の入金は後になります

助成金は、対象者に実際に賞与(6か月分相当として5万円以上)を支給した実績(賃金台帳・振込記録など)を確認したうえで、支給されます。つまり、先に会社として賞与を支払う必要があり、その後に助成金が振り込まれる仕組みです。資金繰りの観点からも、この順序をあらかじめ把握しておくことが大切です。

4. 基本給や既存手当を減らしての穴埋めはできません

賞与制度を新設する見返りとして、基本給や既存の定額手当を引き下げることは認められていません。実質的に賞与へ振り替えているとみなされた場合、不支給となります。処遇改善の実態が伴っているかどうかが確認されますので、賃金体系全体を見直す際は注意が必要です。

5. 雇用期間・雇用保険の加入状況も確認対象です

対象となるパート等は、制度を新設した日の前日から起算して3か月以上前から雇用されており、新設日以降も6か月以上継続して雇用されている必要があります。また、初回の賞与支給日以降6か月間、雇用保険の被保険者であることも条件です。対象者の雇用状況を事前に確認しておきましょう。

(参考)退職金制度もあわせて導入する選択肢

賞与制度に加えて退職金制度も同時に導入すると、支給額が加算される仕組みもあります。中小企業退職金共済(中退共)などを活用する方法もありますが、退職金制度の設計は将来の資金負担にも関わるため、自社の状況に応じて専門家に相談しながら検討することをおすすめします。

よくある誤解

助成金の情報は、SNSや口コミで断片的に伝わることが多く、次のような誤解が生じがちです。あらかじめ確認しておきましょう。

誤解1:「長く勤めてくれているパート1名にボーナスを出せば、簡単に40万円もらえる」

→ 実際には、就業規則上「すべての有期雇用労働者」に適用される制度として整備する必要があります。今回1名で成立したのは、その企業で有期雇用労働者がたまたま1名だったためです。今後パートが増えれば、その全員に同じ賞与を支給する義務が生じます。

誤解2:「会社の実質負担はゼロで、国のお金でボーナスを出せる」

→ 助成金は後払いです。先に自社の負担で対象者へ賞与を支給し、その実績が確認されてから助成金が支給されます。「手出しゼロ」ではない点にご注意ください。

誤解3:「就業規則を変更した後で計画書を出せば間に合う」

→ 計画書の提出期限は「制度を新設する日の前日まで」です。順番が逆になると、原則として救済されず不支給となります。

誤解4:「パートが途中で辞めてしまっても、日割りなどで助成金がもらえる」

→ 支給申請の時点で対象者が離職している場合、原則として助成対象外となります(天災など一部の正当な理由を除きます)。

いずれも「知らなかった」では済まされないポイントですので、制度設計の段階で確認しておくことが、確実な受給につながります。

FAQ

Q1. パートが1人しかいない会社でも申請できますか?

A. 対象となる有期雇用労働者が1人であっても、その1人を含む「すべての有期雇用労働者」に適用される賞与制度として整備されていれば、対象となる場合があります。ただし、今後採用するパートにも同じ制度が適用される点にご留意ください。また、キャリアアップ助成金共通の重要なルールとして、支給決定(入金)の時点で、自社の『雇用保険被保険者数(加入者数)が0人』になってしまっている場合は、原則として助成金を受給できません。パート1名のみの会社様の場合、助成金が下りるまでの間、その従業員に辞めずに働いてもらう(または新しい被保険者を採用する)ことが前提となる点にも注意してください。

Q2. 社長の家族(配偶者や子どもなど)がパートとして働いている場合、その家族への賞与も対象になりますか?

A. 3親等以内の親族については、実際の勤務実態や給与の支払いが適正であっても、助成の対象外となります。家族従業員がいる場合は、事前にこの点を確認しておく必要があります。ご家族以外に該当する有期雇用労働者がいない場合は申請できませんので、事前に確認が必要です。

Q3. 助成金を受け取った後、基本給を下げてもよいですか?

A. 賞与制度の導入に伴い、基本給や既存の定額手当を引き下げることは認められていません。引き下げが確認された場合は不支給となりますので、賃金全体のバランスを考えて制度設計を行うことが大切です。

Q4. 就業規則の変更と計画書の提出は、同時に行ってもよいですか?

A. 計画書は、就業規則に賞与制度を規定する前日までに、労働局へ提出し受理されている必要があります。同時進行ではなく、順序を守ることが受給の必須条件です。

Q5. 退職金制度も一緒に導入した方がお得ですか?

A. 退職金制度をあわせて導入すると、助成額が加算される場合があります。ただし、退職金制度は将来の資金負担にも関わる重要な経営判断ですので、自社の状況に応じて専門家に相談しながら検討することをおすすめします。

チェックリスト:申請前にご確認ください

  • 就業規則の賞与制度を「すべての有期雇用労働者」に適用する内容で設計しているか
  • 就業規則の変更(新設)前日までに、キャリアアップ計画書を労働局へ提出できる準備ができているか
  • 従業員10名以上の場合、労基署の届出印がある就業規則を用意できるか
  • 対象者へ実際に6か月分相当5万円以上の賞与を支給できる資金の見通しがあるか
  • 基本給や既存の手当を引き下げていないか
  • 対象のパート社員が、賞与制度を導入する(就業規則を変更・適用する)日の前日時点で、すでに『3か月以上前』から継続して雇用されているか
  • 対象者に3親等以内の親族が含まれていないか
  • 労働条件通知書・タイムカード・賃金台帳など、法定3帳簿が正しく整備されているか

まとめ

パート社員への賞与支給は、処遇改善と人材定着の両面でメリットが期待できる取り組みです。キャリアアップ助成金は、その取り組みを後押しする制度として活用できる場合がありますが、「すべての有期雇用労働者への適用」「事前の計画書提出」「実際の支給が先」など、確認すべきポイントが複数あります。

これらを踏まえたうえで準備を進めることで、確実な受給とスムーズな制度導入につながります。まずは自社の状況が要件に当てはまるかどうかを確認するところから始めましょう。

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